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凍れる瞳

凍れる瞳_文春文庫.jpg

 この小説のおかげで、「しばれる」という言葉を知った。
 まだ高校生だった。

 去年、作者が亡くなった時、すぐに「凍れる瞳」を思い出した。
 作品で描かれたのは戦後すぐの時代のことだけれど、同じ昭和でも自分が生きた子ども時代と、敗戦後すぐの頃とでは、まったく背景は異なる。
 この作品が直木賞を取ったのは1988年だから、もうすぐ昭和も終わろうとしていた時。すでに戦後の復興期は遠い彼方のことだった。
 だけど、紛れもなく、昭和を築いたのは、武骨で真摯で、そして敗北感をまといながら前進を続けた人たちだった。

 本当に、昭和は遠くなったんだな、と思う。

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