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ハードボイルド・ワンダーランド、ふたたび

世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド下巻_新装版.jpg

 村上春樹の作品の中で一番好きなのは『風の歌を聴け』で、
 短編集なら『中国行きのスロウボート』で、
 長編なら、ちょっと迷うけど、
 『世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド』かな。

 って、みんな初期作品だ・・。
 というのも、最も熱心に読んでいたのが10代の時で、
 やはりその頃が一番多感ですからね。
 特に『風の歌を聴け』は16歳の時に読んだのですが、
 あの時のあの感動を超えるものは、ほとんどないかもしれない、
 というくらいです。
 (ちなみにハードカバーで読んだので、よりいっそう感動的でした。
  というのは、DJの最後のあのカッコ良すぎるセリフが、
  ちょうどページをめくった最初に出てくるのです。
  文庫版だとページの途中なので、ちらっと見えてしまう・・)

 『世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド』は、
 友人に薦められて、学生の時に読みました。
 めくるめく白昼夢的な冒険と夢幻の世界が続いていって、
 すごく楽しかったのですが、
 最後の最後になって、この終わり方かい・・、
 という(笑)。
 自分は、「影」が一番好きだったので、
 なんで「影」の言うことを聞かないんだ、って怒ってたんですよね。
 なぜ冒険をあきらめ、静謐な世界に留まるのか、と。
 でもまあ、今になってみれば、
 あの終わり方こそが、
 時代(と個の問題)の混迷を言い表してるんだろうな、
 認識としては正しかったのだろうな、
 と思うのですが・・。

 で、『国境の南、太陽の西』から、彼の作品をしばらく読まなくなります。
 なんか違うなあ、と。
 やがて就職して、ますます遠ざかって行きました。

 そんな彼の作品の凄さを改めて再認識させられるのは、
 『レキシントンの幽霊』に収められた、『沈黙』と『七番目の男』によってです。
 この2作品は凄く心に響きました。
 そして『神の子どもたちはみな踊る』が刊行され、
 また違った感慨を抱くようになります。

 時が経って・・、
 まさかその世界の終わりが、『不確かな壁』へと改変されようとは・・。

 「君の抜けてきた井戸は、時の歪みに沿って掘られてあるんだ(風の歌を聴け)」、
 だな。

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