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罪と罰

 隊長ブーリバ.jpg
 子どもの頃、家に「少年少女世界の名作文学」全集があって、本好きになるきっかけはここからだった。
(ギリシャ神話や三銃士や宝島、トムソーヤにアリスにほら男爵、西遊記や太平記など、夢中になって読んだ)
 大好きな作品がたくさんあって、よく覚えているものもあれば、普段なんとなく忘れてしまうものもあるけれど、不思議と子ども時代に好きだったものは、ずっと記憶のどこかにあり続ける。

 その中の「ソビエト編」に、『隊長ブーリバ』があった。
 読んだのは後半の方だけなのに、なぜだかずっと忘れずにいる。コサックの隊長は、私情ではなく義のため、かくも強くあらねばならぬのだな、というようなことを思った。
 印象的なシーンがある。
 勇敢な息子が敵(この場合はポーランド)に捕まり、広場で公開処刑されることになって、助けたくても敵陣の真っ只中。それでも息子はどんな拷問にも耐えるんだけど、いよいよ最後になって「お父さん、ここにいるんでしょ」と叫ぶ。するとどこかから、ブーリバの「ここにいるぞ」という声が聞こえ、広場中が騒然とする。
 その後、ブーリバによる大反攻が起こる。

 その頃、自分は勝手に、シルクロード寄りの場所が舞台なのかと思っていたのだけど(なにしろ小学生だったし)、先日気になって調べてみたら、ウクライナの話だった。ウクライナのコサック隊が、侵攻に抗い、自らの民族的解放のために闘うのだ。

 ちょっと眩暈のようなものを感じた。たくさんの時代を、耐えてこなければならなかった歴史。
 もっとも酷いのはボリシェヴィキによるものだけど、時を経て、またしてもロシアがやって来た。
 拷問に耐えようにも限度がある。
 「ブーリバ、ここにいるんでしょ」
 返事をしてくれ、ブーリバ!


 今では全集は、子どものいる従兄妹のところにある。(そもそも自分も、叔父から受け継いだ)
 あの子たちが大きくなった時、全集は誰に引き継がれるだろう。
 その時、世界は平和になっているのだろうか。

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